私の心情(90)―資産活用アドバイス30-英国IFA、コロナ禍で初期アドバイス減が響く

初期アドバイス、4年ぶりに100万件を下回る

前回の「私の心情(89)」で報告した通り2020年の英国アドバイザー業界は、2013年のRDR施行以来、初めて減収となりました。FCAが7月末に発表したそのほかのデータを合わせてみると、その背景が見えてきます。

まず、継続的なアドバイスを受けている顧客数は308.6万人、前年比6.1%増と今回初めて300万人台に乗りましたが、新規に顧客となった人数は38.2万人と過去5年のなかでは最低水準となりました。その結果、初期アドバイスの件数は94.1万件とこちらも過去5年の最低水準となりました。ちなみに初期アドバイスの件数は2017年104.8万件、18年111.0万件、19年102.6万件と3年連続で100万件を超えていましたが、4年ぶりに100万件を下回りました。

継続アドバイスのフィー水準が投資残高の0.5-1%であるのに対して、初期アドバイスのフィー水準は投資金額の1-3%と総じて高水準であることから、その件数の減少は全体の収入減につながったようです。ちなみに、初期アドバイス(個別・アドホックアドバイスを含む)による収入合計は126.2万ポンドと前年比16.2%減に対して、継続アドバイスによる収入は332.2万ポンド、同3.6%増でした。

新型コロナウイルスの蔓延が顧客とのコミュニケーションに大きく影響したことが窺えます。

アドバイザー1人当たりの収入はそれほど変化なし

アドバイザーの人数は前年比で0.5%減少していますが、大きな変化ではありません。また1アドバイザー当たりの収入はアドバイザーの人数が少ない企業を中心に伸びています。ちなみに、1アドバイザー当たり収入をアドバイザーの人数規模別にみると、1人アドバイザー企業で16.8万ポンド、前年比1.4%増、2₋5人のアドバイザー企業で18.9万ポンド、同1.3%増、6₋50人のアドバイザー企業で19.6万ポンド、同3.6%増、50人超のアドバイザー企業で15.7万ポンド、同2.4%減でした。

アドバイザーの少ない企業では、継続アドバイスの比重が相対的に高いことが功を奏しているのかもしれません。逆に、新規顧客獲得の必要性が大きい大手のアドバイザー企業の方が今回の環境激変の影響を相対的に大きく受けているのかもしれません。

中小企業ほど高水準の利益率を保つ

利益率に関しても同様のことが見て取れます。グラフは、税引き前利益が公表され始めた2017年以降のデータをみたものですが、利益率そのものの水準はアドバイザーの人数が少ない企業ほど高くなっていることがわかります。ちなみに、2020年の税引き前利益率は1人アドバイザー企業で41.8%、2-5人企業で32.0%、6-50人企業で18.3%、50人超の企業で-3.3%でした。もちろん小さい企業ほど利益配分型の報酬体系になっている比率が高いといわれていますので、アドバイザーの報酬が人件費に含まれていない場合が多いため、一概にこの水準の比較をすることはできません。

なお、2020年は初めて税引き前利益が黒字になった企業数を発表しています。それによると、1人アドバイザー企業では全体の95.9%に当たる2254社が税引き前利益で黒字でした。2-5人企業では94.9%、1919社、6-50人企業では92.9%、394社といずれも9割以上が黒字ですが、50人超企業では54.3%の19社にとどまりました。