私の心情(18)-お金との向き合い方ー”安く”買う投資の極意

安く買う=「安くなったら(たくさん)買って、高くなったら(少ししか)買わない」

投資で儲けるには、「安く買って、高く売る」ことができればいいはずです。でもこれがそれほど簡単ではないこともよくわかっています。そこであまり欲をかかずに適度に儲けるというスタンスでみてみたいと思います。

そのためには「安く買って、高く売る」という行為を、簡単にするために2つに分けて考えてみます。

最初は「安く買う」です。安く買うためには、今の価格が安いかどうかの判断が必要になりますが、これができない。多くの人が、「投資はいつ始めたらいいのか」といった質問をされますが、一番安いところを指摘しようとすると、これは不可能でしょう。

そこで、「安く買う」という行為を、さらに2つに分けて、「安くなったら買って」、「高くなったら買わない」という、一段緩やかな考え方に変えてみましょう。「安く買う」が“最も安い値段で買う”というようにとらえられがちになる点からすると、「安くなったら買う」という行為は、相対的な表現といってもいいかもしれません。そのため「買う値段」に対する負担がより軽くなっている感じがしませんか。もちろん「高くなったら買わない」も、より相対的な表現となることで「安く買う」という負担を軽減しているように感じられます。

さらに、「安くなったら買って、高くなったら買わない」という表現に、数量の概念を持ち込むことで、より実現可能性が高くなります。具体的には、「安くなったら(たくさん)買って、高くなったら(少ししか)買わない」というように( )のなかに量を表す言葉を補ってみるわけです。と、「高くなったら買わない」のではなく、「少ししか買わない」、すなわち「高くなっても少しだけ買う」ということに切り変えることができます。

これが積立投資の考え方の基本

実はこれが定額による積立投資の発想です。例えば、常に5万円の資金を毎月、投資信託を使って資産形成を行うとする。1万口当たりの価格である基準価額が10,000円の場合には5万口購入できるが、これが12,000円に上昇すれば、4万1,666口と“少ししか買わない”ことになる。逆に8,000円へと安くなれば6万2,500口と“たくさん買う”ことになる。すなわち、積立投資は、投資で儲ける方法の「安く買う」を実現するより簡単な方法といえますね。

当然ながら、この方法ではいつ資産形成を始めるかは問題にならなくなります。買うタイミングを計る必要がないということですが、問題は、資産形成をしている間は、投資商品を「買うステージ」だという認識をしっかりと持ち続けられるかどうかにかかっています。

これまでセミナーなどで、長期投資とか分散投資といった考え方を説明しても、最後の質問コーナーでは、「ところで●●という投資信託は最近値下がりしているのですが、もう売った方が良いですか?」とか、「●●投信はかなり値上がりしたので、そろそろ売った方がいでしょうか?」と聞かれることが多くありました。これは、価格が下落すると「さらに値下がりすると売る時に損をする(儲けが少なくなる)」と心配し、価格が上昇しても「ここで売っておかないとせっかくの儲けが少なくなる」と売る時のことを心配しているからですね。

一般に資産形成は、資産を積み上げていく時期なので「売る」ことを考える必要はありませ。にもかかわらず、今日、明日、明後日の価格が気になって、買うことよりも買った後の「売る時」を気にするようになる。資産形成層が、その資産を売る時は、20年、30年先の話のはずです。