私の心情(28)―資産活用アドバイス5-英国のIFAは零細企業の集まり

英国のIFAは零細企業の集まり

 アドバイス・フィーを前提にしたビジネスモデルは難しいのか?

これまでのコラムのなかで、超高齢社会ではアドバイス業務の重要性が高まることをお伝えしました。ただ、有料のアドバイスは本当に受け入れられているのか、といった疑念もよく投げかけられます。アドバイスは“無料”というイメージが強く、「日本ではアドバイス・フィーを受け取るビジネスモデルは難しいのでは」といった懸念です。そこで、英国のアドバイザー、よく言われるIFAはその業務でちゃんと儲かっているのかを、何回かにわたって、金融当局に申告したデータをもとに分析してみたいと思います。

ファイナンシャル・アドバイスを提供する企業は5,000社強

まずはIFAのビジネスの規模感から見てみます。英国の金融当局はFCA(Financial Conduct Authority、金融行動監督機構)と呼ばれ、2016年以降、不動産、保険、投資商品に関するアドバイスを消費者向けに提供する企業に業務活動の状況を、毎年報告させています[1]

その報告書によると、2018年12月現在でFCAに登録されている個人向けの金融ビジネスを行う企業の数は1万1,860社[2]、そのうち主要業務としてファイナンシャル・アドバイスを手掛ける企業は5,016社で全体の42.3%を占めています。主要業務として保険販売を手掛ける企業は4,994社登録されていて、企業数ではこの2つがほぼ拮抗しています。もちろん、ファイナンシャル・アドバイザーは、いわゆる投資信託などの投資商品を提供することによる収益が全体の8割を占めていますが、それ以外に保険や不動産の販売も手掛けています。

アドバイザー企業の9割がアドバイザー5人以下

英国のファイナンシャル・アドバイスを提供する企業は小規模の事業者が多いことが特徴です。1人のアドバイザーで業務を行っている企業は2,466社と47.0%を占めます[3]。約半数です。さらに5名以下のアドバイザーまで広げてみると、企業数は4,676社となり、全体の89.1%を占めます。もちろん、平均で300名弱のアドバイザーを抱える大手企業も42社あり、そこで働くアドバイザーの数はアドバイザー全体の45.5%に達しています。

こうした規模別の分類を総じてみると、アドバイザー5人以下の企業が企業数で9割、そこで働くアドバイザー数で5割強というのが、英国におけるアドバイザー業界なのです。ちなみにすべてを合計しても1社当たりの平均アドバイザー数は5人前後にとどまります。そうした規模感からみると、零細企業の集まりということができるかもしれません。

 

アドバイザーの規模 別企業数、アドバイザー数

(注)  2018年12月時点でFCAに登録された企業。1社当たりのアドバイザーは筆者が算出。アドバイザーが複数の企業と契約をしているケースもあり、その場合はダブルカウントされている。(出所) Data from the Retail Mediation Activities Return (RMAR)、2019年6月。

 

[1]) Retail Mediation Activities Return (RMAR)と呼ばれる報告書。2020年発表予定の2019年データはCOVID 19の蔓延で延期されている

[2]) 1年間の収益を報告している企業を対象として集計

[3]) ここでのファイナンシャル・アドバイスを提供する企業の総数はダブルカウントの分も含めて5,246社、アドバイザーは26,677者を対象として集計している。