私の心情(60)―資産活用アドバイス25-IFAを考える:その2

前回に続いて、これまで実施してきたIFAに関するセミナーで、”感じたこと”や”考え方”を整理しています。今回は最近多くなっている地方金融機関の合併連携がIFAのビジネスとどう関連するのかをまとめています。

 

急速に進み始めた地銀連携・銀証連携

英国の場合、小規模事業者が多い(5人以下のアドバイザーを抱える企業が全体の9割以上)という事実が、「IFAは地元密着のビジネスである」という特徴を思い出させてくれます。その視点でみると、最近多くなっている地方銀行同士の連携や地方銀行と証券会社の連携動きも違って見えてくるように思います。

地銀連携は、地元の高齢化・少子化や持続する低金利といったビジネス環境の悪化が背景にあると思います。その対策として、金融当局が独禁法の特例とか、日銀の金融支援などによって連携の背中を押す動きが出ています。ただ、「地銀連携はスタートでしかなく、次の再編、すなわち銀証連携に進むことになる」(日本資産運用基盤株式会社代表取締役社長の大原啓一氏)のではないでしょうか。地銀同士の連携はいわゆる水平連携で、規模の拡大やコストの削減といった効果が見込めますが、新しい収益源を模索しようとすると、銀行ビジネスと証券ビジネスの垂直連携は不可欠だという意味です。証券ビジネスを取り込むことは、地元に対するアドバイス業務が念頭にあるといえます。

アンバンドリングで、アドバイスは純粋な金融ビジネスに

米国でも金融ビジネスの合併・連携は頻繁に行われています。その結果、今や“軒を貸す”タイプのビジネスになっていて、その“軒”が証券会社や銀行で、軒の下で活動するのがアドバイザーといった状況です。「委託証券会社はアドバイザーの派遣ビジネスのような様相」(明治大学国際日本学部特任准教授沼田優子氏)というわけです。銀行ビジネスに適したアドバイザー、証券ビジネスに適したアドバイザーというように特徴を理解して、派遣するビジネスが主流になっているようです。

米国の合併・連携を参考にするとき、日本での成功のカギは、「すべてを自前で賄おうとしないこと」(前述沼田氏)だろう。すなわちビジネスの“肝”になる顧客との接点(ここがIFAの最も重要なビジネス)を重視して、それ以外はできる限りアウトソースすることが重要になるわけです。地域や顧客層によっては、すべてのサービスラインナップが必要なわけではないでしょう。また制度の変更や新サービスの登場など環境の変化への対応は、それをすべて自前でやるにはコスト負担が重くなりがちです。こうした点をアウトソースでカバーするわけです。

既に一大勢力となっている英米のプラットフォーマー

アウトソース先として英国で活躍しているのが、プラットフォーマーと呼ばれるビジネスモデルです。プラットフォーマーは、アドバイザーが小規模でもビジネスが可能なように、課金サービスを代行し、報告書や取引履歴を管理するといったバックオフィス業務を代行しています。最近では、ポートフォリオ構築などもプラットフォーマーが担当して、アドバイザーはもっぱらお客様のコーチングに集中するようになっているといわれています。

英国のプラットフォーマーは上位5社でシェア6割といわれるほどの寡占状態ですが、米国は多岐にわたる出自を持ったプラットフォーマーが活躍していて、「まるで戦国時代の様相です」(前出沼田氏)。委託証券会社が提供するもの、決済代行会社が提供するもの、大手の独立系RIAが提供するもの、情報提供会社が提供するもの、投資一任サービスを提供するTAMP(Turnkey Asset Management Program)が提供するものなど、様々です。