私の心情(75)―地方都市移住24-東京からどれくらいの高齢者が転出しているのか

2021年3月に地方都市移住のアンケートを実施し、その分析結果を4月にリリースしました。うれしいことにマスコミからの取材要請も少しずつ入り始め、データを無料公開している意味がやっと出てきました。その中で、実際に移住する人はどれくらいいるのかを調べてみたくなり、総務省統計局の「住民基本台帳人口移動報告」から、2020年の東京都特別区からの転出と転入のデータを分析しました。下記のデータは、60歳以上を抽出して、都道府県別のネットでの転出はどれくらいの規模か、どこの都市に純転出しているか、などを分析したものです。

東京都特別区からの高齢者の転出者数は3万人弱

2020年のデータを見てわかったことは、現役世代は特別区内への転出が、特別区からの転出を上回っている(純転入)ものの、60歳以上では逆に転出が上回っている(純転出)ということです。簡単に言えば、「若い人は東京に移住してくるのですが、60歳を過ぎると東京から出ていく人が多くなっている」ということです。しかも60歳以上の転出者は2万8000人を上回り、転入する人を差し引いても1万3000人以上の純流出となっています。

ただ、これがコロナ禍の影響だとすれば一時的なものかもしれません。そこで2018年のデータも同様に抽出して分析してみましたが、現役世代の転入と60歳以上の転出という傾向は出ています。59歳以下と60歳以上のどちらの層でも2018年と2020年を比べると転出は増えて、転入は減る傾向が強く出ていますので、もともとあった現役世代の純転入と60歳以上の純転出という傾向はコロナ禍が促進させたともいえそうです。

ほとんどすべての県で東京都特別区から純流出に

これを都道府県別に見たものが、次の表です。東京都特別区と各都道府県の間の転出・転入をネットで計算してみたのですが、驚いたことに60歳以上でみると、愛知県を除くすべての都道府県で、東京都区部からの純転出になっていることです。2018年には、愛知県、大阪府、奈良県との間で東京都の特別区は純流入だったのですが、2020年には愛知県のみになったのです。

純流出の大きな都道府県としては、まさしく地方都市移住で指摘される都道府県が上位に挙がってきます。東京都は特別区を除いた地域への転出・転入で計算していますが、これを含めて首都圏4都県では大幅な純流出です。それ以外の都道府県では、茨城県、静岡県、長野県、栃木県といった近郊県が多く、さらに北海道、福岡県、京都府、沖縄県といった地方都市移住ではよく上がっている県が上位に並びます。

地方都市移住先で最も多いのが札幌市

さらに都市別にみると、アンケート調査でも上位に登場した都市が出てきます。2020年の特別区からの転出先で人数が最も多かった都市は、横浜市の1557人、次いで川崎市の1102人でした。ただ、首都圏の都市群を除くリストを作ってみると、札幌市が299人でトップでした。大阪市、福岡市、熱海市がそれぞれ200人を超える都市で、これに続きます。流入を差し引いた純流出先の都市としてみると、札幌市、熱海市が100人を超える水準となり、次いで京都市となっています。いずれも地方都市移住でよく登場する都市です。