私の心情(78)―地方都市移住26-5年前から始めた2拠点生活(京都)

60代半ばから2拠点生活

地方都市移住のインタビュー第2弾は、現在69歳のFさん。

奥様と二人で、京都嵐山のすぐ近くのマンションに住んでいらっしゃいます。「買った後に気が付いたのですが、五山送り火のひとつが窓から見えるんですよ」。

5年前にこのマンションを購入して、その3年前に買っていた東京のマンションとの2拠点生活を今も楽しんでいらっしゃいます。最近、現役世代の2拠点生活が注目されています。コロナ禍でリモートワークのできる地方都市にも拠点を持つというライフスタイルですが、Fさんは5年前の60代半ばから、東京と京都の2拠点生活をスタートさせています。

Fさんは「ちょっとやることもあって、時々東京に行っています」とおっしゃって、現在は東京3割、京都7割の2拠点生活とのこと。実は、東京に駐車場と2棟のアパートを所有していて、その関係の業務があるからとのこと。奥様は、京都の保守的な気風から最初はなかなか馴染めなかったそうですが、地元のサークルに入って仲間ができた今では、京都の比率が9割以上とのこと。卓球クラブと社交ダンスクラブなどを楽しんでいらっしゃるようです。

なぜ京都なのか

東京との2拠点生活は、「別の街に行くという気分で緊張感があって、老化防止になる」とのこと。その一方で、京都は「イキイキしている街」だと評しています。人口140万人で高齢者も多いが、大学生も多い、それが街全体をイキイキとさせているのではないかと考えていらっしゃるようです。

もともと旅行が好きで、札幌、軽井沢、京都などへ旅行するたびに、それらの都市を移住先としてもみてきたとのこと。長期滞在できる旅行が好きなのだそうですが、実際にはそうしたホテルはあまり多くなく、「それならばマンションを買おうかな」という思いも募っていったとのこと。そのなかで京都を選んだのは、「探せば、自分でも買える水準の物件があったこと」が大きかったようです。もちろん住むことを考えると、「京都の真ん中なら東京とあまり変わらない。だからちょっと離れたところが良い」というのがFさんの考え方です。そうした考え方に奥様が賛同されていたのも最終的に京都を選んだ大きなポイントのようです。

今楽しんでいること

「もうずいぶん前からですが、そう釣りバカ日誌が最初かな」と話始めてくださったのが、映画やCMのエキストラの仕事。エキストラ歴も長く、日当3000円のものから、夫婦で1回15万円のCMなどにも出たことがあるそうです。釣りバカ日誌では日当は出なかったそうですが、ロケ弁をいただき、映画に出ているという興奮だけで、なんだかうれしかったとおっしゃっていました。これがハマった原因かもしれません。もちろん、京都に住んでいるので、旅費で足が出るようなエキストラは断っているとのことですが、ギャラの高いものは希望者も多いようで、エキストラで生活するのはむりなようですが、何歳でもそれ相応の「役がある」とのことで楽しんでいらっしゃいます。

これからのこと

5年後を考えると、さらに京都の生活の比重が高くなるだろうと考えていらっしゃいます。住民票とかかりつけ医、これがこれから考えることとのこと。2拠点生活で京都中心になっているとはいえ、まだ住民票は東京に残したまま。「実は京都は70歳からバスのシニアパスがもらえるので、それまでには住民票を移そうと思っている」とのこと。京都の生活には、かなり網羅的になっているバス網が使いやすいようです。バスを多用するので、このシニアパスのメリットは大きいようです。

それにかかりつけ医。東京には内科のかかりつけ医がいるとのことですが、まだ京都では見つかっていない。眼科や歯科は通っているところがあるが、相談できる内科医はやはりなかなか変えられないようで、どうしても東京に行った時に診ていただいているようです。これも考えないと、と気にされています。

転職を機に40代になってお金との向き合い方を変えた

ところでFさんの退職後の生活費はどうなっているのか、特に2拠点生活を支える資金はどうねん出しているのか気になるところでした。2拠点生活の理由は東京に不動産を所有していることでした。ここから上がる不動産収入が生活を支えているのです。

この話を聞いたときは、なんだ、もともと資産家だったのかと思ったのですが、そうでもないようです。資産運用は「株を100万円くらいだけ」でほとんどやっていないとのこと。長く自動車業界に勤めた後、40歳の時に米国系の自動車会社に転職されたことが、今の生活を形作ったスタートだったとおっしゃっています。「収入は3割くらいアップした」とのことでしたが、「それで生活水準を変えなかった」ことが、結果的には今の生活につながったと自己評価されています。「収入が増えた分で生活水準を上げることはせず、40代はその分を子どもの教育費に充てた」とのこと。「それが終わった50代で、その分をどうするかと考えた」。その結果が、「ローンを組んでアパートを保有、その返済に教育費がなくなったことで浮いた分を充てること」を考えたようです。今は、公的年金とこの賃貸収入で生活は何とかやっていける水準だという。

インタビューを終えて

年収が上がるとそれに合わせて生活水準を引き上げる人が多いが、私自身の経験から考えると、年収が上がっても生活水準をそれに合わせてあまり引き上げないことが、資産形成には大切だと考えています。現役時代から自分の生活を抑制気味にしていくことで、将来の生活の糧を確保するというFさんの姿勢は、資産形成の王道のように映ります。