私の心情(99)―お金との向き合い方34-資産形成、私の失敗から学んだこと

自分のビジネスパーソン人生を振り返ってみると、資産形成に関してはその前半は失敗の連続だったなという忸怩たる思いがあります。もちろんそれがあったからこそ、その反省に立って後半は「放ったらかし」にして上手くいったなという思いもあります。ただ、もし前半からしっかりやっていれば、もっと資産は増えていたのにと思わないでもありません。私のビジネスパーソンの前半の失敗をご紹介して、皆さんの参考になればと思います。

狙って投資をしたら儲からなかった

私は1982年に大学を卒業して、金融業界でのキャリアの第一歩は山一証券経済研究所でのアナリストでした。ただあまり自慢げに言えるものではなく、1₋2年で担当を外されるという情けないスタートでした。今から思えば、これからバブルを迎えるところでしたから、あまり売り買いしなければ儲かっていたのではないかと思います。当時のアナリストは今と違って自由に株の売買が認められていて、先輩には「株を買ったことがないアナリストが良いレポートを書けるか!」って言われていたものです。ただ儲けようという思いが強すぎたのか、ちょっと下がると怖くて売ってしまっていたように思います。東京電力、日活などなど、結局は儲けた記憶は全くありません。仕事をしながらそんなにうまく儲けられるわけはなかったんでしょう。

長期・積立投資で大失敗

最近は長期投資とか積立投資の効用をよく聞きますが、これでも失敗をしました。毎月お給料のなかから山一證券の自社株を買い続けていました。22歳から16年ほどの長期でかつ毎月の積立投資を続けていたわけですが、結果は会社が自主廃業したため、紙切れになりました。一体いくらまで資産が積み上がっていたのか考えたくありませんが、最終的にその資産は0円となりました。

一般に長期投資、積立投資はリスク軽減に有効だといわれますが、実際にはそうならない場合もあるのです。これは特殊な例だといってしまえばそれまでですが、教訓として理解してほしいのは、長期投資だけでもダメ、積立投資だけでもダメ、この2つがあってもダメ、そこに分散投資も必要だということです。もちろん分散投資だけでもダメでしょう。よく言われる長期・分散・積立は3つ揃って力を発揮するものだと思ってください。それと、会社が倒産すると、投資先の自社株も給与の源泉も一緒に無くしますから、その点でも十分に分散しているとは言えないかもしれませんね。

バブルのピークでマンション購入

まだ失敗はあります。最初のマンションの購入契約をしたのが1989年12月でした。これを知っている人は、「野尻にだけは資産運用のアドバイスを受けたくない」と冗談っぽく(本当に冗談で!)言っていましたが、事実、バブルのピークで購入した新築マンションの価格はその後急落しました。4300万円で買って(うち住宅ローン3500万円)、1300万円で売るといった事態でしたが、途中で山一證券の自主廃業があったため、マンションを売却してもローンが返済できない事態になりました。

その顛末はここでは省略しますが、そのころから確定申告をするようになりました。住宅ローン減税とか、株や住宅の売却損を減税に活用したり、損失を繰り延べしたり、いろいろ学びました。それ以降、医療費控除も含めて30年ほど毎年確定申告を続けていますから、その間に節税できた分はかなり多くあったはずです。こちらはマンションを購入したメリットといえるでしょう。それでも若干(そう思いたいのですが)、損失の方が大きいとは思いますが。

放っておいてうまくいった資産形成

98年にメリルリンチ証券東京支店の調査部に転職してから、お金との向き合い方がちょっと変わりました。そのころにはコンプライアンス・ルールが厳格になって、調査部に在籍しながらだとETFでも売買には細かいルールがありました。もちろん個別株を探して売買するほど時間的な余裕はありませんでしたから、差し当たり日本株ETFだけを対象に、資金ができた折に投資をしていました。確か反対売買には6か月だったかの期間を空ける必要があったのですが、いまだに売却していませんから長期投資になっています。

2006年にフィデリティ投信に転職してからは、株式投資信託での毎月の積立投資を柱にするように変更しました。それでやっとしっかりと意識をもって放っておく資産形成に進み始めたといってもいいでしょうか。それが47歳の時です。ちなみに投資対象は、日本株の投資信託、アジア株の投資信託、欧州株の投資信託、米国株の投資信託で、それを毎月4分の1ずつの資金で積立投資をしていました。2014年からはすべて一般NISAで行っています。

こちらは2021年4月の退職時点まで続けましたが、積立はそこでストップし、今はそのまま保有を続けているだけとなっています。

こうして振り返ってみると、資産形成に動き出したのは決して早くないですよね。資産形成のセミナーでは、「資産形成をいつから始めればいいか」がよくテーマになりますが、自分の経験からすれば50歳近くになってからでも十分できるものだといえます。もちろん早ければ早いに越したことはありませんが。