私の心情(148)―お金との向き合い方47-英国IFA業界、成長するも課題も垣間見える

 

 

 

 

 

 

 

前回に続いて英国金融当局FCA(Financial Conduct Authority, 金融行為規制機構)が発表した、英国IFA業界の収益動向の集計結果を紹介します。

顧客数増加を支えた新規アドバイス

アドバイス業務の中身の変化をみると、「コロナ禍からの回復」と手放しで評価できない姿も垣間見られます。2020年の新規顧客数は38.1万人と前年比で42.3%減少していましたが、2021年は40.9万人、7.2%増と増加に転じています。2019年がBrexitの影響で金融市場が波乱となり新規顧客が急増した(66.1万人)という特殊事情が、ここ数年の伸び率の変動を大きくしていますので、実数でみるのが良さそうです。2019年を除けば2016年以降、新規顧客数は年間大体40万人前後ですから、2021年は通常のペースに戻ったということができるでしょう。その意味ではコロナ禍から回復したことは確かですが、大きく伸びたわけではありません。

新規顧客数の回復を支えたのが、初期アドバイスの件数増です。2021年の初期アドバイスの件数は、167.6万件、前年比78.0%増となりました。2020年がコロナ禍で初期アドバイスが難しくなったことを鑑みると増加したことは当然ですが、2016₋2019年がほぼ100万件前後でしたから、これと比べても2021年は6割くらい増加しているわけで、かなり積極的に初期アドバイスを行ったことが窺えます。

初期アドバイス件数増はフィーの割引が奏功か?

英国のアドバイザーにはIndependentとRestrictedがあることを「私の心情146-英国IFA、21年は売上げ22%UP」で紹介していますが、今回の初期アドバイス急増の中心となったのが、IFAでした(初期アドバイスの件数に関してはIFAとRFAに分けて統計が開示されています)。2020年のIFAによる初期アドバイスはコロナ禍の影響を受けて大きく減少しました。これはIFAが小規模な企業体であることから、オンラインでの顧客とのコミュニケーション等すぐにコロナ禍の環境への対応ができなかったからではないかと推測されます。その反動もあって2021年は逆にIFAによる初期アドバイスの件数が大きく伸びています。

一方でRFAは大手の企業が多いことから、環境変化にも相対的に迅速に対応できたのか2020年も初期アドバイスの件数の伸びはマイナスにはなりませんでした。その分2021年の伸びは大きくはありません。

ただ、IFAでは、初期アドバイスの件数の伸びほどに、初期/単独/臨時のアドバイス収入額が伸びていないのが気になります。1件当たりの初期アドバイス収入を計算するには、正確な数値ではありませんが、初期/単独/臨時のアドバイス収入額を初期アドバイス件数で除した1件当たりの収入を計算すると、2016₋2020年が1300-1600ポンドだったのに対して、2021年は838ポンドとその半分くらいに大きく低下しています。実態がつかめていませんが、初期アドバイスの割引が行われたのではないでしょうか。FCAに届けられている初期アドバイスのフィー水準(投資額に対するアドバイスフィーの水準)の平均値も、若干ですが最大値が前年の3.1%から3.0%に低下しています。

サービスを止めた顧客数が増加傾向

一方で、コロナ禍の影響や相場環境の激変からでしょうか、年間でサービス提供を終える顧客も多くなりました。2021年の年間のサービス終了顧客数は17.5万人と前年比37.1%増加しています。この数値は2016年以降、増加傾向を続けていて、2021年は2016年の2.2倍の水準にまで増えています。

当面は新規の顧客数がサービスを終了された顧客数よりも多い状況ですから、年末の顧客数は増加傾向にありますが、年末の顧客数に対するサービスを終了した顧客数の比率がじりじりと増加していて、2021年では5%を上回ってきています。ちょっと気になる傾向です。