私の心情(217)―資産活用アドバイス87-保有資産額と満足度

あけましておめでとうございます。2024年も引き続きフィンウェル研究の活動である「資産活用」や「デキュムレーション」を広げることを進めてまいりますので、一層のお力添えをお願い申し上げます。

年末にリタイアメント・インカムの考え方をご説明しましたが、年始は保有資産額とその満足度を考えてみたいと思います。

 資産を増やすことでその満足度を高める

資産水準の満足度を高める方法を考えてみると、すぐに思いつくのが資産運用だと思います。非常に大切なことですし、今や資産運用を行うことは政府が後押ししている政策でもありますから、多くの方がその効用に関して納得されることでしょう。

特に現役世代にとって、今年からスタートしたNISA(少額投資非課税制度)の拡充は、その思いを実現しやすくするものとして評価されるはずです。年間で最大360万円の非課税投資ができることは、ほとんどの現役世代の方がその投資のほとんどを非課税枠で行えるくらい大きな上限額だと思います。10年前のNISAがスタートしたときには、願っても実現しなかった水準です。

取り崩しながらも満足度を高める

一方で、デキュムレーションの視点でみると、資産水準の満足度を高める、または維持する方法として大切なのが、退職後における資産の減り方を抑えることです。資産水準を高めることはできないかもしれませんが、年齢を重ねても相応に資産が残っていることはその満足度を高め、維持することにつながります。資産は減りながらも満足できる水準では残っているということが大切なポイントではないでしょうか。

この点に関しての議論が日本ではなかなか尽くされていないように思いますが、これも極めて重要な視点だと考えています。これが「資産活用」とか「デキュムレーション」の議論の根底にあるものです。

「60代6000人の声」からわかる資産額とその満足度

実際に、保有資産額と、資産水準や生活全体の満足度の関係をグラフにしてみると、わかりやすくなります。このグラフは、「60代6000人の声」で回答してくれた6503人の保有資産帯ごとに、生活全般の満足度と資産水準の満足度の平均値をとったものです。

右に行くほど資産水準が増え、それに合わせて満足度が高まっていく姿がわかります。資産が多いほど満足度が高いというのは、60代をゴールだと想定すれば、現役時代の資産形成の目標のようなものでしょうか。

資産活用期の資産と満足度の関係

その資産額の軸を逆にして、右に行くほど資産額が減っていくグラフを作ってみました。これを見ると、資産が減っていくにつれて満足度が低下する姿が思い浮かびます。こちらはまさしく資産を使って減らしていく時代のお金との向き合い方そのもののように思います。いかに減り方をコントロールできるかは、生活の満足度を維持していくことに大切なポイントであることがわかります。

ちなみにこのグラフを見て気が付くことがひとつあります。グラフの形状が保有資産2000万円くらいのところで屈折していることです。すべての人が数千万円の資産を持っているわけではありませんが、例えば5000万円の資産を保有している人が、毎年生活費に使って徐々に資産が減っていくと満足度は低下します。

ただ、このグラフでみると、2000万円くらいを下回ると満足度の低下度合いが大きくなることがわかります。これはなかなか興味深い事象だと思います。「老後2000万円問題」が、その悪影響として、多くの60代に資産2000万円をひとつのめどとしてしまったのかもしれません。

年代を含めて資産とその満足度を考える

ただ、右軸は保有資産額なので、資産が減っていくことが満足度を下げるということを示していますが、年齢を重ねることの影響を織り込んでいません。一般的には、同じ資産額でも年齢の高い方がその金額に対する満足度が高いはずです。例えば、2000万円の資産を、65歳の方が感じる満足度と80歳で感じる満足度では80歳の時の満足度の方が高いように思います。もちろんその時の生活パターンが違うでしょうから、比較は難しいところですが、余命年数を考えれば65歳と80歳のそれぞれにとっての2000万円の価値は、80歳の方にとって相対的に高いと思います。

それを前提に考えると、凸型の下降曲線は、年齢を重ねるほど上にシフトする形になるはずです。そのイメージをグラフにしてみました。同じ資産額でも年齢が高いほど満足が高いとすれば、年齢を重ねるごとに資産が少しずつ減っていっても資産に対する満足度はそれほど低下しないことがあり得ます。

これが資産をうまく活用する大切な視点だと思います。「資産活用」という考え方を追求することは、生活のために資産を少しずつ使いながら、満足度をそれほど引き下げないで済ませる方法を探ることでもありそうです。これからもこの作業を継続していきたいと思います。