私の心情(318)―取り崩しインタビューLさん:山梨の別荘との2拠点生活
東京+山梨の2拠点生活
まずは山梨に数年前に買われた別荘の話から紹介したいと思います。インタビューに応じていただいた66歳のLさんは、登山が大好きなこともあって八ヶ岳などによく登っているとのこと。早くから別荘も探していて、何度も足を運ぶ中で、偶然、「居抜きで、即金なら800万円で売る」という物件が出てきて即決。メンテナンスは大変ながら、格安で購入できたこともあって気に入っていらっしゃる様子です。
63歳の奥様もその別荘はお気に入りのようで、別荘の玄関側はお花を中心に手入れをなさっています。裏側はLさんの趣味で菜園になっているようです。お二人とも、今は2週間に1回くらいのペースで通っていて、ちょうどいい感じの2拠点生活を送っていらっしゃいます。
近隣で4000万円くらいの売値がついているとのことで、「70代後半とか80代になって高い山に登れなくなったら、ここも売却対象だ」と割り切っていて、人生の最後半の資金源と見込んでいます。
都内の住宅は60歳前にローンを完済
Lさんご夫婦にはお子様がいらっしゃいますが、お二人ともに独立して、現在は都内のマンションに2人で住んでいらっしゃいます。Lさんは医療関連会社に勤務され、2年間の継続雇用を経て、62歳で退職。その後は特に働いていません。奥様は教員をされていますが今は休職中です。
現役時代、共働きでしたから普段の生活費などは主にLさんが負担され、奥様の収入は貯蓄に回されていました。その甲斐もあって、自宅を購入される際には頭金をかなり多く用意でき、その分ローンが少なくできたことから、結果として60歳以前に完済できています。
ちなみに、ご自宅のマンションは駅前という好立地で、20年ほど前に新築でリフォームも加えて5600万円で購入されています。そのうち頭金は2600万円、ローンは3000万円です。
金融資産は総額4500万円に
退職に伴う一時金は300万円程度だったようですが、代わりに確定拠出年金が退職後の生活のための資産になっています。その額は3500万円程度で、2021年の退職時点に一時金として受け取っています。「やはり退職所得控除の大きさと所得課税が残りの半分にしかかからないことのメリットは大きい」と感じていらっしゃいます。
このうち2000万円は定期預金にしてあり、これはできるだけ最後まで残しておきたい資金とみています。残りの1500万円は山梨の別荘の維持修繕費に使うようにと考えています。ほんのちょっとしたリフォームでも100万円くらいはかかるので、これは意外に早くなくなるかもしれないと気にされています。
現役時代は貯蓄もできたようです。持ち家なのに住宅手当てが数万円あり、かなり「福利厚生で優遇されていた」とのこと。そこで貯蓄した分で個人向け国債に投資をしています。その額は700万円くらい。また2021年からつみたてNISAで運用をしている資金が現在100万円程度、2024年の新NISAになってから、米国債投信など200万円程度を成長投資枠で保有しています。
親の介護と相続と
Lさんのご両親はすでに他界されていて相続資産として1000万円ほどを受け取っていらっしゃいますが、その資金は今、弟さんが住んでいらっしゃるご両親の実家の修繕費に回すようにしているとのことです。ご自身が住んでいらっしゃるわけではないのですが、財産のうち実家は弟さんに、金融資産はすべてLさんに分割されたとのことから、「修繕費くらいは出す」と決められたようです。
奥様は数百万円の生前贈与を受けているようですが、そのご両親は90歳前後で、現在、2人とも四国の実家に近い施設に入所されています。認知症の症状が重いお母さまは月額30万円、元気ながら一人では生活できないお父様は4人部屋でもっと費用は安いようですが、それでも2人合わせるとかなりの負担になります。2人の年金だけではカバーできないために、奥様とそのご姉弟で一部を負担されています。しかも奥様は毎月のように実家まで行かれ、10日間ほど面倒を見ていらっしゃるとのことでした。
支出が意外に多い
現在の生活の原資は公的年金で、月額25万円、年間で300万円程度の収入になります。それ以外にはちょっとしたアルバイトなどで年間30万円くらい。一方で、支出は毎月の年金で足りない分が月に14~15万円あって、これにマンションの管理費が5万円程度上乗せされます。合計すると、月額で45万円くらいになっているようです。このほかに前述の奥様の実家行きのコストもあり、意外に支出は多くなっています。
退職時点で別に貯蓄していた資金が地元の銀行や郵便局などに少しずつあって、合計すると1500万円くらいになっていたとのことですが、これが徐々に費消され、あと2年ほどで使い切るだろうとみていらっしゃいます。
70代からの資産収入確保がカギに
その先の生活費は、個人向け国債の満期が来るので、それを生活費に充当し、70代後半以降はNISAなどにある有価証券と山梨の別荘の売却資金を充てるというつもりになっていらっしゃいます。山梨の別荘は登山という趣味の拠点になっていますが、山を登れなくなれば売るべきだと承知されています。売却額が入るだけでなく、メンテナンスのコストも削減できるので、大きな収支改善につながる可能性が出てきます。
あとは一時払いの医療保険が3口あって、満期になれば1500万円くらいになるので、医療関係の出費が必要になれば、これを充当できるのではないかと見込んでいます。
インタビューを終えて
現在の2拠点生活はちょっとうらやましいと思いましたが、将来、今住んでいるマンションの生活に落ち着くとすると、生活費を引き下げる、いわゆるダウンサイジングの移住の準備というわけではなさそうです。あくまでも山梨の別荘は趣味と割り切っています。だからこの支出は「楽しみのためのお金」で、それを楽しめなくなったらすっぱりとあきらめるという考え方なのでしょう。人生の最後半の生活用に、まとまった資金が入るめどがあるのは大切なことです。
インタビュー中に何度か伺った「定期預金としている2000万円は万一のときのためにできるだけ使わないで残しておきたい」という思いもよくわかります。この考え方を中核にして、資産の取り崩しの順序を考えていくというのも、上手な考え方だと思います。


