私の心情(323)―相場動向に敏感だった2025年のNISA
2025年のNISA統計
先般、金融庁から2025年12月末時点の「NISA口座の利用状況調査」が発表されました。口座数は2825万5664口座、年間買付総額(新規)が18兆7934億8108万円と、前年比でそれぞれ10.4%増、8.1%増と拡大を続けていることが分かりました。まだ速報値のため、年代別の統計などは確報を待つことになります。
一方、年代別の統計が取れる「家計調査 二人以上世帯(家計収支編)」も12月分まで開示されたことで、2025年の有価証券の購入額と売却額のデータが入手できます。ただ、1世帯当たりの平均購入額・売却額で、アンケート調査のため月次のブレが大きく、NISA以外の売買も含まれています。ただ、最近はNISAでの投資が多くなっていることから、新NISAの売買動向に近いのではないかと思っています。
月次統計では、既に1月分まで発表されている日本証券業協会の「NISA口座の開設・利用状況」もあります。証券10社の統計ですが、カバー率はかなり高いことから、月次のNISAの動向としては使いやすいものです。ただ、このデータでは年代別の動きが分かりません。
さらに2月に入って日本証券業協会は「新NISA開始後の利用動向に関する調査(調査結果概要)」を発表しており、これは2025年の利用者の動向をみるには情報が多く含まれています。概要だけにもかかわらずかなり詳しい情報が開示されており、今後発表される詳細分析が待たれるところです。
年前半に集中する投資
まずは金融庁のNISA統計から。ポイントは、成長投資枠での投資額の推移にあります。年間の買付額を半期別に分けてみると、下の表のとおり、1-6月に大きくなる傾向があります。

つみたて投資枠での投資は、その投資の性格上、毎半期購入額が着実に増加していますが、成長投資枠は上半期に集中する傾向を見せます。これは成長投資枠を一括投資で活用する人の多さが背景にあります。特に旧NISAからの移管資金を使って新NISA投資をする場合には、年始に投資をする傾向が強いこともあります。この傾向は旧NISA制度の最後の満期が来るまで、あと3年は続くことになります。
相場に左右される成長投資枠の動向
そのため成長投資枠の場合は、前年同期比でみる必要があります。25年では、前半は前年同期比でマイナス6.1%と減少し、後半は前年同期比で13.8%増と急増しています。前半はトランプ関税などの波乱要因があり、後半は株価の急騰が影響していると思われます。
日本証券業協会の「新NISA開始後の利用動向に関する調査(調査結果概要)」によると、回答者7926人のうち、つみたて投資枠だけで購入した人は23.7%、成長投資枠だけが19.8%、成長投資枠とつみたて投資枠の併用が56.5%ですから、成長投資枠を利用している人は4分の3を占めています。
また成長投資枠での1人当たり購入額は94.2万円とつみたて投資枠の45.5万円の2倍強にあたります。さらに成長投資枠ではその購入銘柄の48.2%が日本株となっています。こうした特徴から、成長投資枠の動向は、相場変動の影響を受けやすくなっていると思われます。

つみたて投資枠の買付額が伸び悩み
なお、少し気になり始めているのが、つみたて投資枠で買付額が伸び悩み始めている点です。25年の後半は、前半に比べて970億円弱しか増えていません。45.5万円の年間投資額の平均は上限にまだ余裕があるとはいえ、決して少ない金額ではありません。つみたて投資の性格上、平均購入額が年間上限額にどんどん近づくということは簡単ではありません。今後は、投資額の拡大よりも、もう一段のすそ野の拡大が重要になると思います。
成長投資枠は50-60代が中核利用層
成長投資枠の変動は、日本株の買付が多いことの他に、年代別の特徴も反映している可能性があります。投資額を年代別にみると、つみたて投資枠が若年層で、成長投資枠は中堅から高齢層という特徴もあります。金融庁から公表されている年代別の投資額の分布は、直近データで2025年6月末ですが、それによると、成長投資枠での買付額では50代が21.5%、60代が19.9%です。つみたて投資枠の30代23.0%、40代23.8%、50代22.6%と比べると、中核層の年齢が高いことが分かります。

そこで年代別投資の動向を、家計調査のデータから見てみます。全体としては、過去10年ほどの傾向からすると、有価証券の購入額を着実に増やしてきているのは34歳以下の若い世代です。一方で、急激な変化を見せているのが50代後半層です。新NISAの導入に合わせて急速に投資に動き始めています。
それほど反応していないのが、65歳以上の世代です。もちろん新NISAで投資額を増やしている姿を見ることができますが、年齢が高くなるほどその勢いは弱くなっています。

相場に揺れる2025年の投資
2025年の投資動向をもう少し細かく見るために、家計調査から月次の年代別有価証券購入額の動きをみてみます。2025年は春と年末に特徴がありました。4月はトランプ関税の影響から相場が急落していますが、その前後に大きく購入額を増やしたのが、35-39歳、40-44歳、そして55-59歳の層です。相場の急落時に積極的に買いに出たような動きです。
また、それまで急騰を続けてきた相場がもみ合いとなった年末の11月、12月には、50代後半が購入額を伸ばしています。急騰相場に強気に出ているような動きがみられます。
それ以外の月は、どの年代層も大きな変化がなく、継続的な購入額が続いていました。

急落があってもいいように備える必要も
2025年は新NISAが一段と拡大した年になりましたが、投資額の中核を占める40代、50代が相場の影響を強く受けている感じが気になります。有価証券の運用は価格変動リスクと付き合うものです。特に退職準備の最終コーナーにいる50代後半の世代が、あまり相場に賭けるような動きにならず、改めて分散投資の重要性を認識しておきたいところです。

