私の心情(325)―「60代6000人の声」2026年第1弾:生活の全体像と移住
都市生活者6000人の声を集める
今年で5回目を迎えたフィンウェル研究所の「60代6000人の声」アンケートを、1月26日から2月3日にかけて行いました。回答者は、人口30万人以上の都道府県庁所在都市に住む6438人で、男性が4870人、女性が1548人です。都市生活者を対象としているのは、退職後の生活で地方での生活と都市での生活では、その生活費や必要と考える資産額が大きく異なると考え、敢えて都市生活者の声だけを集めています。
その集計結果がまとまり、今後3回にわたって、そのデータを分析し、昨年と比較し、グラフ化しながらブログで紹介していきます。なお、ここに紹介したグラフの他にも関連するグラフを含めたリンクをこちらからご覧ください。
改めて確認する65歳の変化
第1回目は、60代の生活の実状と移住です。全体として、昨年のデータと大きく変わったところはありません。ただ、特別支給の老齢厚生年金の受給対象者がほとんどいなくなったことから、64歳で年金を受け取っている人が27.7%にまで低下しています。昨年のアンケートでは、64歳の50.1%が年金を受給していると回答していましたから、その違いは大きいといえます。

年金受給が仕事を辞める理由ではない
それに合わせて、65歳になると就業者が5割を下回ります。ただ、この傾向は昨年と変わりませんから、「年金を受け取り始めたので働かない」といったモチベーションがあるわけではないようです。無職のなかには、パートやアルバイトなどで働いている人も含まれていますので、実態はもっと多くの方が働いているはずです。
ただ、それでも60代の生活を考える上では、65歳というのが何か大きな区切りになっていることは間違いないでしょう。

「生活費<年収」の健全な生活
勤労収入と公的年金受給を合わせた平均年収は558万円で、年間生活費の平均は352.8万円でした。平均値ベースでみれば年収が生活費を上回る結果となっています。また最頻帯は世帯年収で201‐400万円層が26.3%で最も多く、年間生活費では同じく201‐400万円が最頻帯。ただその比率は43.1%と高く、200万円以下の層も25.7%と高く、合わせると67.8%にまでなります。分布から見ても、収入を大きく下回る生活費で暮らしている人が多いことが分かります。
資産は2コブの分布
ただ、資産の分布は、これも昨年と同じだが500万円以下層が41.8%と大きな規模を占めています。ただもうひとつ2001‐5000万円の層が16.5%を占めて、全体では2つの大きなまとまりがある分布となっています。

7割が「保有資産で生活はなんとかなる」と考える
毎年「保有する資産でその後の生活はカバーできるか」と聞く設問を設けています。資産を保有している5049名が回答していますが、その7割が「十分できる」または「何とかぎりぎり足りると思う」と回答しています。「退職後の生活資金を心配する」といわれる現役層からすると、「保有資産で何とかなる」と考えている60代が7割もいることはやや違和感を感じる結果ではないでしょうか。

保有資産の延命策として資産運用を上げる人の比率が上昇
そうした少し楽観的な目線も考えると、そこに何か資産の延命策があるのかもしれません。そこで、保有資産の延命策として何を考えているのかを、8つの選択肢から選んでもらいました。その結果、30.8%と最も多くの人が選んだのが「少しでも長く働いて収入を得る」との選択肢です。ただ、その比率は昨年の34.2%からは3.4ポイント低下しています。
2番目が27.2%の人が選んだ「生活費を切り詰める」です。これも昨年は30.6%が選んでいましたので、3.4ポイント低下しています。
3番目が、21.6%が選んだ「持っている資産を株・債券・投資信託などで運用する」で、こちらは昨年の18.1%から、3.5ポイント上昇しています。
全体にトップ3に変動はありませんが、資産運用を保有資産の延命策として考える人が増えていることが特徴になっています。資産運用に関しては、第2回目でもう少し詳しく取り上げます。

3大都市生活者の6人に1人は移住を考えたことがある
東京、大阪、名古屋の3大都市に住む60代2114人に、「これまでに地方都市への移住を検討したことがあるか」を聞いたところ、「現在地方都市への移住を検討している」と回答した人が10.5%、「過去に地方都市に移住を検討したが諦めた」と回答した人が5.1%となった。合計すると、15.6%となり、6.4人に1人が地方都市への移住を考えたことがあることが分かりました。

移住した人の4分の3は良かったと評価
また実際に地方都市に移住した人に、移住の評価を聞いたところ、74.4%が「良かった」と評価しています。この設問は、2019年に実施した「地方都市移住調査」から継続して聞いていますが、ほぼ毎年4分の3が「良かった」と回答する傾向は変わりません。
また良かったと評価する理由で最も多いのが「生活費の削減」であることも変わっていません。なお、移住をためらう理由としてよく挙げられるのが、移住によって現在のネットワークが切れてしまうのではないかとの懸念です。ただ、実際に移住して良かったと思う人の評価に、「新しいネットワークができた」、「家族・夫婦関係が良くなった」といった点があることも知っておいて欲しいところです。

どこの都市に移住すべきか
このブログを読んでいただいている人も心の中では「地方都市への移住も良いかも」と思っていらっしゃるかもしれません。そこで、「であればどこが移住先としていいのだろう」というのが気になると思います。
アンケートでは、回答者に今住んでいる都市を「退職後の生活場所として推奨するかどうか」を、「住むべきではない=0点」から、「是非住むべきだ=10点」の11段階で聞いています。全回答者の平均値は5.95点でした。
ただ、これは他人に推奨するという視点ですが、その推奨する回答者自身が、今の生活にどれくらい満足しているかも気になるところです。そこで生活全般の満足度を「満足できない=1点」から「満足できる5点」で評価してもらい、それぞれ都市ごとに平均値を取ってみました。平均値は3.23点です。
宇都宮、金沢、宮崎、岡山、奈良、鹿児島、那覇がトップ10入り
その結果を、縦軸に退職後の生活推奨度、横軸に生活全般の満足度を取ったのが、次のグラフです。全体の平均値は生活推奨度で5.95点以上、満足度で3.23点以上ですので、その両方を上回った都市、すなわちグラフの第1象限に載った都市の評価が相対的に高いといえます。
具体的には仙台、宇都宮、鹿児島、奈良、那覇、さいたま、金沢、宮崎、横浜、岡山の10都市です。昨年と比べると、宇都宮、金沢、宮崎、岡山、奈良、鹿児島、那覇が入り、札幌、高松、大分、静岡が落ちています。

次回の第2弾は、「生活の満足度と資産運用の実状」として、60代にとっての生活全体、健康、仕事・やりがい、人間関係、資産水準の各満足度の分析と、資産運用の現状を紹介します。

