私の心情(326)―「60代6000人の声」2026年第2弾:生活満足度と資産運用
「60代6000人の声」2026年の調査結果のまとめ第2弾です。前回の第1弾では生活の全体像と移住を紹介しましたが、今回は生活満足度と資産運用に関するポイントをまとめます。
相変わらず低い資産水準の満足度
ウェルビーイングの議論でよく使われるGallup社の定義を参考に、退職者向けに生活全般の満足度は、健康水準の満足度、仕事・やりがいの満足度、人間関係の満足度、資産水準の満足度の4つで構成されると考えて、「60代6000人の声」アンケート調査では5つの満足度を毎回聞いています。
満足度は、5段階評価で「満足できる」=5点から「満足できない」=1点までの評価をつけていただく方法をとっています。2026年の各満足度の平均値はグラフの通りですが、資産水準の満足度が唯一、中立的な水準「どちらでもない」=3点を少し下回っています。
ただ、仕事・やりがい、健康状態、人間関係の満足度は3点を上回り、資産水準の満足度の低水準を補って、総合点としての生活全体の満足度は3点を上回りました。ちなみに、これは、過去4年分の特徴とまったく同じです。多くの60代が現状の資産水準にあまり満足していないものの、生活全般では満足している姿が浮かび上がります。

資産が減ると満足度が下がる
資産水準の満足度は資産額そのものの水準に依存します。そのため、取り崩し期に入る退職世代にとって、資産が減るのは当たり前のはずですが、それを心理的に受け入れにくい可能性があります。
グラフは、世帯資産水準のレンジごとに資産水準の満足度の平均値をとってプロットしています。資産が1億円を超える世帯ではその満足度は4点にかなり近いところにありますが、6000万円になると4点を下回り、2000万円を下回ると一段と満足度が低下することがわかります。これを資産水準の満足度曲線と呼ぶことにしています。

年齢が高いほど同じ資産額でも満足度は高い
しかしその一方で、年齢が上がると同じ資産水準でもその満足度が高くなる傾向も見えてきます。次のグラフは、その資産別の資産水準の満足度曲線を60‐62歳と67‐69歳で集計して比較したものです。67-69歳の資産水準の満足度曲線は、60-62歳の満足度曲線の上側に位置する傾向が強く出ています。これは昨年の分析結果でも示された関係です。
同じ資産水準でも年齢が高いほど資産水準の満足度は高くなる、あるいは年齢が高くなれば同じ満足度水準を維持するために必要な資産額は少なくても済む、といった示唆が見えてきます。これが正しければ、「運用しながら使うこと」で資産が減っても満足度を維持できる可能性があることを示しているのかもしれません。

持ち家生活者の満足度は相対的に高い
今回の調査では持ち家に住んでいる60代が74.6%に達しており、居住状態別に生活全般の満足度を集計しました。結果は、持ち家生活者の生活全般の満足度は、「どちらかといえば満足できる(=4点)」と「満足できる(=5点)」が全体の52%と過半を占め、平均満足度は3.4点となりました。これは賃貸生活者の2.8点と比べてかなり高い水準です。
60代にとって、持ち家での生活は生活全般の満足度を高めるように働いていることがうかがえます。現役時代のコスト面からみた「持ち家か賃貸か」の考え方に、満足度という視点も加える価値があることを示唆しています。

これから力を入れたいこと:健康、旅行、資産運用、社会貢献
60代にとってこれから力を入れたいことを聞いてみると(複数回答)、上位2つは食生活に注意することとジョギングなどをすることで、「健康管理」への注目度が高いことが分かりました。それに続くのが旅行など今できること、その次が資産運用、そして少し比率は小さくなりますが社会貢献と続きます。
今年は社会貢献の選択肢を追加したため、昨年との単純比較はできませんが、ジョギングなどをすることが減少(48.3%→43.9%)し、資産運用を続けたい人は増えています(22.5%→27.1%)。第1弾のレポートでも指摘した通り、ここでも資産運用に対する興味が高まっているデータが見つかりました。

60代都市生活者の4割が投資
そこで60代都市生活者の投資に関する分析結果をまとめておきます。まず投資をしている人の比率は過去のデータと大きく変わらず、4割です。ただ、投資をしている2798人のうちNISAを利用している人の比率は前年の64.1%から70.6%に高まっています。


資産運用で資産寿命を延伸
投資をしている人はそれほど増えているわけではありませんが、何のために資産運用を行っているのかという位置付けに関しては変化があるようにうかがえます。
資産を保有する5046人にその資産寿命の延命策を聞いたところ、第1位「長く働くこと」、第2位「節約」、第3位「資産運用」の上位は変わらず、その順位も同じでした。ただ、それぞれの比率は「長く働くこと」が昨年34.2%から30.8%に、「節約」も昨年の30.6%から27.2%へと低下する一方で、「資産運用」は昨年の18.1%から21.6%へと上昇しています。
ちなみに資産運用を行っている人だけを抽出して同様の上位3策の昨年との変化をみると、「長く働くこと」が30.8%から28.3%に、「節約」も22.6%から19.2%に低下しています。一方で、「資産運用」は32.9%から36.9%へと上昇していますので、全体の傾向と同じといえます。ただ、それでも資産運用を行っている人の3分の1しか資産寿命の延伸を目的に挙げておらず、まだ多数派にはなっていません。

次回の第3弾は、「資産の取り崩しの解像度を上げる」として、60代にとっての資産の取り崩しを多方面から分析した結果を紹介します。

