私の心情(312)―英IFAの2024年、顧客数が初めて減少

11月下旬に英国金融当局FCAから、英国金融アドバザー業界の2024年データが公表されました。例年の夏場の発表から今年はかなり遅れていましたが、現在英国当局と業界で報告案件作業の効率化が議論されている影響ではないかとみています。

RDR以降、過去最高を更新

24年の個人向けビジネスを行っている金融アドバイザー業界全体の収入は、56億7200万ポンド(1ポンド=200円で換算、1兆1344億円)、前年比6.2%増と、前年のマイナスからプラスに転じました。そのうち86.7%を占める、いわゆるアドバイス・フィーは49億1500万ポンドで、前年比6.5%の増加です。

この10年で2度目の減収となった23年から増加に転じ、24年の収入は13年のRDR施行以降の最高水準を更新しました。

小規模アドバイザーの減少

アドバイザー数も前年の減少から微増ながら増加に変わりました。しかし小規模のアドバイザーだけをみるとその数の減少は顕著です。24年末に登録されているアドバイザーの総数は2万8425人、前年比1.1%増となりましたが、1人アドバイザー企業のアドバイザー数(=企業数)は1950人、前年比8.5%減です。

これまでも1人アドバイザー企業のアドバイザー数は16年の2427人から22年の2381人までの6年間で1.9%減ってきたのですが、23年が10.5%減、24年が8.5%減と一気にその流れが進んでいます。ちなみに、1人アドバイザー企業のアドバイザー数は過去8年間で2427人から1950人へと19.7%減少しました。

同様に2-5人のアドバイザー企業のアドバイザー数も、24年は5130人、前年比5.8%減となっています。

大手のアドバイザー数が過半に

一方で、50人超のアドバイザー企業で働くアドバイザー数は、逆に1万5016人、同7.1%増となっています。その結果、英国アドバイザー業界において、大手への寡占化が進みました。ちなみに、アドバイザー数でみるシェアは、50人超規模の企業で働くアドバイザー数が16年の44.0%から24年には53.2%と23年に続き2年連続で50%を超えています。

1人アドバイザー企業は依然として高水準の収益率を維持

収益性のデータをみると、確かに中小のアドバイザー企業の収益性は少し低下しています。税引き前利益率は39.4%と、このデータが公表された17年以降で初めて40%を下回りました。しかし税引き前利益が黒字となった企業の比率は95.2%と前年93.9%よりも高まっていることを考えると、収益性の低下が中小企業で働くアドバイザー数減少の大きな要因とはいえないように思います。

アドバイザーの高齢化が影響

中小企業のアドバイザー数減少の背景として挙げられるのは、アドバイザーの高齢化の問題です。現地の雑誌などでは、アドバイザーの高齢化で事業の継続が困難になり、事業売却が多くなっていることが、報じられていますし、アドバイザー企業のM&Aのテーマもよく取り上げられています。

顧客数が初めて減少

1人アドバイザーは地元密着のアドバイザーで、顧客数を拡大させることよりも、既存顧客と長く寄り添っていくタイプが多いと言われています。その1人アドバイザーが減少していることが影響しているのか、年末の顧客数が、この統計がスタートして以来、初めて前年比で減少しました。減少率はわずか0.2%でしたが、それまで年率7.0%増の勢いで伸びていた顧客数がついにマイナスに転じたことは大きな変化といえます。

新規の顧客数は前年比では21.4%増となっていますが、サービスを受けなくなった顧客数は28万5270人と前年比39.4%増と増えています。事業休止・売却に伴って中小アドバイザーを辞めた顧客がすべて大手企業に鞍替えしているわけではないことをうかがわせます。

資産価格上昇でアドバイス収入が増加

ただ、最初のグラフでも指摘した通り、アドバイス収入は増えています。アドバイス・フィーの水準は変わっていませんが、アドバイス収入総額は初期アドバイスでも継続的なアドバイスでも増加をしており、時価の上昇で投資額・預かり資産が増えていることを反映したと推測されます。ちなみに、24年のアドバイス収入は初期アドバイスで前年比5.6%増、継続的アドバイスで同6.5%増、全体で同6.3%増です。

資産価額が増加していることもアドバイザーの高齢化問題の解決策として、事業の売却が増えている要因ともいえそうです。