私の心情(117)―資産活用アドバイス46-60代6000人の勤労、年金、資産運用

これまでの「資産活用」の考え方をお話する際に、よく引用していたのが

退職後の生活費=年金収入+勤労収入+資産収入

でした。前回の私の心情116では、60代6000人のアンケートから、「退職後の生活費の削減が資産の延命策の中心であった」ことを紹介しましたが、それがかなり心許ないものであることも推測されました。

7割が「年金が最も頼りになる収入」と位置付け

では、等式の右側にある3つの収入に関してどう見ているのかを、アンケート結果から紹介します。まずは年金収入です。退職後に最も頼りになる収入は何かを聞いたところ「公的年金」と回答した方が69.4%となり、ダントツのトップでした。次が「勤労収入」で14.0%、「資産収入」は8.0%、「家賃・不動産収入」は3.1%でした。特に60代後半では「公的年金」を挙げる方の比率が78.1%と高く、年金受給が始まるとその依存度が大きくなることを示しています(受給者は76.3%、未受給者は61.3%)。

また、他の収入が多いと思われる人ほど公的年金への依存度が低いのも自明です。ちなみに、1億円以上の保有資産を持つ392人では、「公的年金が一番頼りになる」と回答した人は38.5%にまで低下し、代わって「家賃・不動産収入」が17.9%にまで高まります。また自営業者などでは公的年金の金額が少ないこともあって、「公的年金を一番頼りになる」とみている人は48.4%に留まり、勤労収入に頼る人が22.9%と高くなります。ただ、退職してしまうと元自営業者などの人も公的年金に頼らざるを得なくなり、その比率は77.6%にまで高まります。

ところで、回答をいただいた6486人の60代のうち、まだ年金を受け取っていない人は2982人(46.0%)でした。その方々に何歳から年金を受け取る計画であるかを尋ねたところ、65歳が72.9%と最も多く、次が70歳の16.2%になりました。いわゆる繰下げ受給となる66歳以降を合計すると、24.6%となり60代の4人に1人は繰り下げ受給を想定していることになります。

6割が「勤労収入がなくなったときに年金収入を期待する」

次に勤労収入ですが、これは年金収入までのつなぎとしてみている人が多いことがわかります。何歳まで働き続けたいかの希望を聞いたところ、年金未受給の2982人では32.9%が65歳、22.0%が70歳と回答しています。既に働いていない人を除いた2311人でみると、それぞれ42.4%と28.3%となります。

年金を受け取れるまで働こうと考えるのが一般的だろうと思います。今回のアンケートでも、先ほどの現在働いていてまだ年金を受給していない2311人を、いつまで働きたいか、いつから年金を受給したいかの回答でクロス分析してみました。「64歳または65歳まで働いて、65歳から年金を受け取る」と回答された方は980人で全体の42.4%、「70歳まで働いて70歳から年金を受け取る」と答えた方が220人、同9.5%でした。そのほかの年齢でも、勤続希望年齢と年金受給開始予定年齢が連動している人を合計すると、1329人、全体の57.5%となりました。

3分の1が「働くことは考えたくない」

その割に60代は長く働くための工夫にそれほど前向きではない姿も窺えます。「長く働くために工夫していること」を上げてもらいましたが、スキルアップ、就活、起業など何らかの対策を選択された人は2230人、34.4%と全体の3分の1に留まりました。もちろんボランティアなどに時間を使いたいとの回答もありましたが、「働くことはあまり考えたくない」と考えている人が2263人、34.9%と一番多くなったことが気になるところです。

資産運用は4割が実施

次は資産収入ですが、60代6000人のうち4割が現在も資産運用を続けていることがわかりました。非常に高い比率だと思いますが、その一方で、これまで一度も資産運用をしたことがないとの答えも同様に4割に達しており、60代にとっては資産運用は行動を2分しているものだといえます。

また、資産を保有している5339人に対しては、その資産をどう活用するかについて聞いていますが、やはり「金融資産は運用する」と回答した人が4割、「資産の活用は考えていない」と回答する人も4割に達しており、ここでも資産を活用するかどうかで大きく2分していることがわかります。

 3つの収入を得ている人は6%

最後に勤労収入、年金収入、資産収入のうちどれを生活の糧にしているかを知るために、「現在働いているか」、「年金を受け取っているか」、「資産運用をしているか」を、年齢別にクロス分析してみました(図表6)。

60代前半では、勤労収入だけを収入源としている人が最も多く、その比率は25.2%(944人)、次が3収入とも無しの685人(運用をしていないだけで資産収入はあるかもしれません)、その次が勤労収入と資産収入だけの650人、17.3%でした。

しかし60代後半になると、やはり年金だけの人が1071人、39.2%と一気に増えます。もちろん資産運用を行っていないだけで、資産収入はあるかもしれませんが、それでも収入減は大きく変わります。その次が年金と資産収入の746人、27.3%です。

ちなみに、3収入ともある人は60代を通して394人で、全体の6.1%でした。しかもその構成比は60代後半の人の方が多いのはちょっと驚きです。