私の心情(155)―お金との向き合い方52-加速する若年層の投資、その陰で売却も増える

 

 

 

 

 

 

昨年から総務省「家計調査」のデータで、有価証券の購入額と売却額の推移をみるようにしています。最初にこのことを書いたのが2021年6月の「私の心情80、若年層における投資の広がりと懸念」です。それ以降、折々このデータをアップデートしていますが、このところの数値はちょっとこれまでにない水準です。

20年ぶりの高水準の有価証券購入額が続く

家計調査の有価証券購入額の全世代の平均値は、2020年、新型コロナが蔓延し始めた春あたりから上昇しはじめ、20年ぶりに月額購入額の12か月平均値で2000円を超える水準になりました。そして、2021年夏あたりからはそれが3000円台に上昇し、その後1年ほど3000円台の金額が続いています。

若年層の投資が爆増

このデータから30代以下の若年層を抽出したのがもうひとつのグラフです。2015年以降に統計の区分が変更され、34歳以下と35‐39歳の2つの階層の平均金額が発表されています。その数値を同様に12ヵ月の移動平均でみると、2018年初から上昇基調となり、2020年夏からはその急増傾向が顕著になっています。特に35-39歳の購入額平均の12ヵ月移動平均は2021年春以降、急増し、ここ数か月は1年半前の4倍の水準となる8000円台にまで高まっています。明らかに若い人が有価証券投資に積極的になっている証拠といえ、かつその時期からつみたてNISAのスタートが影響していることが窺われます。グラフの縦軸のスケールを全世代平均と合わせてありますから、若年層の金額が全世代平均を上回っている、すなわち高齢層の購入額よりも若年層の購入額が大きく上回っていることがわかります。

若年層の売却も顕著

一方で売却額も急増していることが気になります。特に35⁻39歳層は、購入額急増に連動するように売却額も急増しています。購入が増えれば売却も増えるのは当然といえば当然なのですが、全世代平均ではそれほど売却が顕著ではありません。また、つみたてNISAの好影響で購入額が増えているならば、その影響で売却額も増えているということになります。非課税期間が20年もあるのに、1年程度で利益確定をするようなパターンが広がっているということは、かなり大きな問題といえそうです。若干、ほっとしているのは34歳以下の売却額は昨年夏あたりをピークに減少していることです。この年代の差に何があるのかも気になるところですが、分析はできていません。

NISAの恒久化が待たれる

つみたてNISAでは、毎年の「枠」を意識させがちであることが課題だと考えています。例えば、2019年につみたてNISAで投資した投資信託に利益が出た場合、「非課税ならまずは利益確定しておこう。また来年新しく非課税投資をすればいいから」といったマインドセットに陥っている可能性があります。非課税期間があるということは、過剰に「2019年枠」、「2020年枠」を意識させますから、このマインドセットを変えられるのは非課税期間の無期限化しかないように思います。投資した年の「枠」を考えなくてよくなれば、大きな樽に毎年、毎月、資金を入れてすべてが平準化されていくことで、「●●年に投資した分」といった切り分けをしないで済むようになるはずです。これが本当の積立投資だと思いますので、NISAの改革が待たれるところです。